成績概要書(作成 平成10年12月)
課題の分類
研究課題名:無人ヘリコプタYH300の散布性能
予算区分:受託
担当:中央農試 農業機械部 機械科、稲作部 栽培第二科
研究期間:平成10年度
協力・分担関係:なし

1.目的
 無人ヘリコプタによる薬剤散布は防除技術として定着しつつあるが、安全で安定した作業の成否はオペレータの習熟度に左右される。オペレータの負担を軽減させるため、新たに飛行安定装置を搭載した無人ヘリコプタYH300の作業性と防除効果を検討する。

2.方法
1)防除試験
(1)試験場所および期日:長沼町農家水田、平成10年7月〜9月
(2)対象作物:水稲(「きらら397」、5月21日移植)
(3)対象病害虫:いもち病とカメムシ(アカヒゲホソミドリメクラガメ)
(4)使用薬剤:カスラブトレボンゾル(8倍希釈、散布量800cc/10a)
(5)供試機:無人ヘリコプタYH300、対照機KG135Ⅱ
(6)試験方法:いもち病防除効果(ポットイネの持ち込みによる調査)、カメムシ防除効果(すくい取りによる自然発生数の調査)、薬液付着状況(黒色ミラコート紙に付着した薬液粒子を調査)

表1 供試機仕様諸元
型式 全長
(mm)
機関出力
(PS)
薬液散布
方式
散布幅
(m)
薬液タンク
容量(リットル)
飛行制御装置
供試機 YH300 3,950 21 アトマイザ 7.5 24 各種センサによる飛行安定装置
対照機 KG135II 3,825 17 アトマイザ 5 10 ジャイロ装置のみ

2)飛行安定性試験
(1)試験場所および期日:中央農業試験場、平成10年9月21日、10月3日
(2)供試機:無人ヘリコプタYH300、対照機KG135Ⅱ
(3)試験方法:GPSセンサによる飛行航跡の比較(RT-2:NovAtel社製)、送信機スティック操作量の比較

3.結果の概要
1)供試機の薬液付着状況は対照機と同等であった。測定地点により薬液付着状況の変動がみられたが、これは測定地点と飛行経路の相対位置の影響と考えられた。
2)薬液粒子の飛散状況については供試機と対照機の差は認められなかった。
3)散布幅の拡大、薬剤および燃料積載量の増加により1フライト当たりの散布面積が増加したため作業能率は対照機より向上した。
4)殺虫殺菌混合剤散布によるいもち病・カメムシに対する防除効果は対照機と同等であり、無処理区と比較して高い効果が認められた。
5)飛行速度や飛行高度の安定性、および飛行の直線性は対照機より向上し、経験の少ないオペレータでも対照機より安定した飛行が可能である。また送信機のスティック操作量が対照機より減少し、操作性が向上したと考えられる。

表2 薬液散布状況
散布日 7月29日 8月7日
作業方法 対面飛行・圃場内旋回・旋回時散布有 対面飛行・圃場外旋回・旋回時散布無
機種 YH300 KG135II YH300 KG135II
試験時の風速(m/s) 0.8 1.8 0.2 0.6
実散布薬液量(cc/10a) 640 680 560 620
1cm2当り草冠部粒子数(粒径:mm) 39.5(0.25) 60.1(0.25) 51.6(0.24) 31.0(0.28)
1cm2当り株元粒子数(粒径:mm) 40.4(0.21) 40.6(0.24) 21.0(0.31) 10.6(0.29)
飛散調査距離(m) 25 50 25 50 25 50 25 50
1cm2当り飛散粒子数
(粒径:mm)
16.9
(0.19)
15.9
(0.16)
21.3
(0.18)
21.6
(0.17)
0
(0)
0
(0)
1.3
(0.22)
0
(0)

表3 散布作業能率
散布日 機種 面積
(a)
作業幅(m) 行程数 作業速度
(km/h)
作業時間
(s)
作業内訳(%) 作業能率
(ha/h)
設定 実測 南北 東西 散布 旋回 移動 準備
7/29 YH300 68 7.5 8.6 2 8 15.9 314 65.9 − 15.0 19.1 7.8
KG135II 71 5.0 6.4 2 16 15.5 502 63.1 − 14.9 21.9 5.1
8/7 YH300 68 7.5 7.7 2 9 16.7 414 47.1 21.7 13.3 17.9 5.9
KG135II 71 5.0 5.1 2 20 18.9 651 42.1 22.1 13.8 22.0 3.9
同上試算 68 5.0 4.9 2 14 18.9 582 43.6 16.2 15.5 24.7 4.2
注)作業人数:操縦者1名、合図・補助2名
試験区画:【YH300】南北69m東西98m、【KG135II】南北102m東西70m
作業内訳:【準備】資材積込・機関始動、【移動】散布始・終点と発着場間の移動
試算はKG135Ⅱの数値を基にYH300区で作業した場合を想定

表4 防除効果
試験区 いもち病病斑面積率(最低-最高)
(%)
アカヒゲホソミドリメクラガメ発生数(すくい取り20回)
第1回散布 第2回散布
第1回散布 第2回散布 散布前 散布後 散布前 散布後
YH300区 0.2(0.1-0.5) 1.4(1-2) 1.7 0.2 1.8 0
KG135II区 0.4(0.1-0.5) 1.0(0.1-2) 2.3 0.2 2.3 0
無処理区 2.6(2-5) 5.4(2-10) − − − −

表5 GPSデータによる航跡の比較
操縦 機種 オート
機能
風速
(m/s)
飛行速度 航跡の直線性 飛行高度
平均
(km/h)
CV
(%)
回帰直線と
の相関(R2)
CV
(%)
平均
(m)
CV
(%)
初級者 YH300 ON 4.2 21.5 9.7 0.9995 1.2 2.71 9.8
YH300 OFF 4.2 28.3 9.0 0.9997 0.7 2.73 6.3
KG135II − 4.7 20.7 21.6 0.9983 3.7 2.83 12.2
上級者 YH300 OFF 3.0 21.4 7.3 0.9999 0.7 3.08 7.5
KG135II − 4.4 23.4 10.9 0.9998 0.3 2.99 7.4

表6 スティック操作量
操縦 機種 オート
機能
エレベータ エルロン ラダー コレクティブピッチ
(pulse) CV(%) (pulse) CV(%) (pulse) CV(%) (pulse) CV(%)
初級者 YH300 ON 5.1 200.8 11.7 215.7 2.5 177.2 4.0 196.0
YH300 OFF 11.7 249.7 19.8 201.5 2.5 181.2 7.0 213.0
KG135II − 25.9 216.0 47.4 181.1 27.1 217.3 10.0 229.5
上級者 YH300 OFF 13.0 212.0 16.3 207.9 2.3 179.8 12.9 190.6
KG135II − 17.6 188.8 49.3 192.5 12.9 193.8 17.0 203.0
注)スティックと機体動作の関係
エレベータ:前後
エルロン:左右
ラダー:方向
コレクティブピッチ:上下

4.成果の活用面と留意点
1)無人ヘリコプタ利用技術指導指針および農林水産航空協会の指導に従って作業を行うこと。
2)水稲の防除作業以外への適用は未検討である。

5.残された問題とその対応
 なし