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上川農業試験場

場長室より(風景とひとこと)

道総研上川農業試験場のサイトにお越しいただき、誠にありがとうございます。 

このページ「場長室」では、上川農業試験場の近況や作業風景、催しもののお知らせ、お知らせすることがないときは場長のたわいないひとりごとを記載いたします。お目汚しの写真とつたない文章ではありますが、もしお時間が許しましたら、ときどきこのページにもお付き合いいただけますと幸いです。

 

2025.12.23 いくつもの作物があったことでしょう

当場は、近くを走る国道から試験水田がよく見えます。業務紹介でも「水稲の品種開発が大きなミッション」と説明することが多いためでしょうか、一般の方からは「畑もあるの?」としばしば驚かれます。実は水田と同じくらいの畑圃場があり、畑作物や野菜の試験を行っています。

年末を機会に、「水稲以外」にどんな作物が今年の当場で試験栽培されていたのか、振り返ってみようと思います。ちょっと長くなりますがご容赦ください。

 

1)秋まき小麦:種をまく時期が秋(9月)なので「秋まき」と呼ばれます。雪の下で冬を越し、春からぐんぐん伸びて夏の収穫に至ります。小麦粉の種類に応じ、うどん用(中力粉)、菓子用(薄力粉)、パン・中華麺用(強力~超強力)と、それぞれ異なる品種が存在します。根雪が長い当場では、北見農試と共同で、長く雪の下となっても枯れにくい品種の開発を行っています。また、新品種候補について道北地域での適応性を評価しています。当地全域で作付けの多い品種は「きたほなみ」(主にうどん用)です。ほかに、「ゆめちから」(美瑛町など)、「キタノカオリ」(東神楽町・旭川市など)、「つるきち」(苫前町)などのパン・中華麺用品種が栽培されています。

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秋まき小麦(きたほなみ)

 


2)春まき小麦:種をまく時期は春(4月)で、秋まき小麦とは品種が異なります。パン用(強力粉)としては国産小麦ではもっとも優れた品質と評価されています。当場では、道内で開発された新品種候補について、道北地域での適応性を評価しています。地域全域で作付けが多い品種は「春よ恋」です。ほかに「ハルユタカ」や「はるきらり」(下川町など)が栽培されています。

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春まき小麦

 

 

3)二条大麦:ビール麦とも呼ばれます。ビールの原料となります。小麦と似ていますが違う植物です。道内では富良野地域(上富良野町、中富良野町、南富良野町、富良野市)とオホーツク地域で栽培が多い作物です。当場では、新品種候補について、道北地域での適応性を評価しています。現在の主要品種は「札育2号」です。

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二条大麦

 

4)ばれいしょ(じゃがいも)。生食用(野菜として調理)、業務加工用(サラダ、ポテトチップ等)、でんぷん原料用で、品種が異なります。当場では、新品種候補について、道北地域での適応性を評価しています。当地域では「男爵いも」や「キタアカリ」(野菜用)、「きたひめ」(ポテトチップ用)をはじめ、いろいろな品種が栽培されています。

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ばれいしょ

 

5)大豆(だいず):用途別に、黄大豆(豆腐など)、黒大豆(煮豆)、納豆用小粒(納豆用)で、品種が異なります。当場では、新品種候補について、道北地域での適応性を評価しています。地域では黄大豆「ユキホマレ」の栽培が主体ですが、最近は「とよまどか」が増えてきました。また、旭川市周辺は黒大豆「いわいくろ」の主産地のひとつです。私は煮豆(黒でも黄でも)が好きです。

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大豆

 

 

6)小豆(あずき):あんこや甘納豆になります。普通小豆と、粒の大きい大納言小豆とで、品種が異なります。当場では、十勝農試と共同で、当地で発生の多い土壌病害(茎疫病)に強い品種の開発を行っています。また、新品種候補について、道北地域での適応性を評価しています。代表的な品種として、「エリモショウズ」、エリモショウズを改良した「エリモ167」、粒の大きい「とよみ大納言」、そして「しゅまり」があります。特に「しゅまり」はいくつかの製餡メーカーから評価されています。私は粒あんが好きです。こしあんも好きです。

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小豆

 

 

7)そば:粉にして麺として食べる「蕎麦」です。当場では、新品種候補について、道北地域での適応性を評価しています。「キタワセソバ」が主体ですが、より安定してたくさん穫れ食味も良好な新品種「キタミツキ」が増えてきています。私はシンプルなもりそばと、鴨南ばんが好きです。

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そば

 


8)なす:夏野菜の代表格ですね。地域で栽培が増えつつあります。当場では、ハウスを用いた養液栽培技術について検討しています。私は焼きなすが好きです。天ぷらも好きです。

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なす

 

 

9)トマト:夏野菜の代表格。当場では、害虫対策試験のために栽培しました。

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トマト

 

 

10)ミニトマト:植物学上の分類はトマトと同じ種(しゅ)です。実が小さい品種を総じてミニトマトと呼んでおり、ミニトマトが生長するとトマトになるということはありません。当場では、害虫対策試験のために栽培しました。

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ミニトマト

 

 

11)メロン:当場では、ウリ科(キュウリなど)に発生する土壌病害対策試験のために栽培しました。残念ながら、実を食べる目的の試験ではありませんでした。

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メロン

 


12)アスパラガス:当場では、病害対策試験のために栽培しました。春から初夏にかけての代表的な野菜ですが、最近はハウス内で夏や冬に出荷する作型も行われています。ゆでてよし、焼いてよし、ベーコンを巻いてよし、よだれが出てきました。

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アスパラガス

 


13)こまつな:寒さに強く、冬でも無加温でハウス栽培できます。当場では、冬栽培で発生する病害対策試験や肥料試験を行っています。

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こまつな

 


14)リーフレタス:こちらも寒さに比較的強く、冬でも無加温でハウス栽培できます。現在、冬栽培での肥料試験を行っています。

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リーフレタス

 


15)飼料用とうもろこし:緑肥として栽培しました。

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飼料用トウモロコシ

 

 

16)スイートコーン:害虫の防除試験を行いました。植物種としては前記“飼料用”と同じ「とうもろこし」に分類されますが、食用にした際に粒が柔らかく甘みが強いなど特徴が大きく異なります。畑での見た目の違いとしては、スイートコーンは葉っぱがだらんと垂れています(飼料用は上向きの葉が多い)。

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スイートコーン

 

17)ひまわり:緑肥として栽培しました。花が咲く直前に畑にすき込んでいます。

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ひまわり

 

 

18)トウガラシ:ダニ防除試験のために栽培しました。

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トウガラシ

 

 

19)ホップ:ホップそのものの試験は行っていませんが、防除試験をスムーズに行うにあたり、ダニを誘引する目的でひと株だけ栽培していました(ダニが着生しやすい代表的な作物とのこと)。

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ホップ

 

 


……いや、あるわ。こんなにあったの。実に19品目。すべて何らかの試験課題として、あるいは試験遂行に必要な作物としての栽培でした。

 

どうせなら、もうひと種類加えてキリの良い数字にすればと思いましたが、ここに水稲を入れたらぴったり20種類でした。なんだかスッキリしました。

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稲(ゆめぴりか)

 

稲を除けば、ひとつひとつは比較的小さな面積での栽培ですが、品目数なら他の試験場と比べても多いかもしれません。

このほか、試験場の外でも、関係者のご協力をいただいて、てんさい(砂糖の原料)、金時豆(煮豆や甘納豆)、いちご、きゅうり、ブロッコリーの試験を行いました。これらを合わせると25品目

2025年に25品目でしたので、来年は26品目を目指しま、、、そういう目標はやめておきましょう。

 

上川農試の位置する上川・留萌地域は、水稲はもちろんのこと、小麦や豆類、ばれいしょなど畑作物の栽培面積も多く、また施設野菜や露地野菜は農家経営上重要な位置づけとなっています。当場では今後も、水稲の新品種開発、畑作物等新品種候補の適応性評価や、地域ならではの課題対応ならびに新技術開発に取り組んで参ります。

 

 

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インスタグラムにも写真を掲載しています

 

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