研究成果:9号の3
根釧農試 研究通信 第9号
(1999年3月発行)研究成果
3.フリーストール牛舎における乳牛行動と快適性判定法
酪農施設科
1.試験のねらい
フリ-スト-ル・ミルキングパ-ラ方式を導入するにあたっては、省力的な乳牛管理作業と乳牛にとって快適な空間を確保する必要があります。そこで、フリーストール式牛舎における乳牛行動を明らかにするとともに、牛床の快適性の判定法を検討しました。
2.試験の方法
1)フリーストール牛舎における乳牛行動
1996年6月~11月に根室管内のフリーストール飼養農家12戸(うちビデオ撮影4戸)について24時間行動観察とビデオ撮影による乳牛行動観察を実施しました。
2)牛床の快適性判定法
乳牛の横臥状況の悪い農家において、牛床改良と乳牛行動の変化を観察しました。また、24時間乳牛行動調査から横臥率(観察時の牛床利用総頭数に対する牛床横臥頭数の割合)を検討し、乳牛行動による牛床の快適性の改善と判定法を示しました。
3.試験の結果
1)フリーストール牛舎における乳牛行動
乳牛の日中の牛床横臥率は搾乳後が最も高く、その後徐々に低下して搾乳前で最低となりました。夜間の横臥率は夜中に採食頭数が増加するため一時的に低くなる場合もありましたが、飼槽の飼料が減少するにしたがって横臥率は上昇しました。また、搾乳作業前後の飼料給与の有無により、搾乳後の乳牛行動が決定され、搾乳終了時に新鮮な飼料が配餌されている場合には、採食してから横臥していました(図1:省略)。
搾乳時間を除いた乳牛の1日の行動は、牛床での横臥が52.7%、牛床佇立が15.0%、採食が21.7%でした。1日の横臥割合が高い農家では、牛床での佇立割合は低く、横臥割合が低い農家では牛床佇立割合は高くなっていました(表1)。
牛床横臥頭数の少ない農家で、牛床空間を改善して頭部突き出し空間を確保した場合には、牛床横臥率は約2~3週間で安定し、牛床改善後、平均横臥率が改善前と比較し17%上昇しました(図2:省略)。
これらのことから、牛床の快適性は横臥率によって推定できることがわかりました。
牛床横臥率から一般的な牛床の快適性を判断するための指標は、乳牛の行動が比較的安定している状態で、平均的な横臥率の範囲は70~80%、牛床が快適である場合の横臥率は80%以上です。横臥率が70%以下の場合は、牛床に何らかの問題があると判定できます(表2)。
牛床の快適性を簡易に判断する場合には、夜の搾乳終了1.5時間後から2時間の観察(搾乳終了後給餌の場合には、給餌終了2時間後から2時間の観察)による横臥率を用いることができます。
表1 乳牛行動の出現割合(%)
| 農家区分* |  
 A  | 
 
 B  | 
 
 C  | 
 
 D  | 
 
 E-1  | 
 
 E-2  | 
 
 F-1  | 
 
 F-2  | 
 
 G  | 
 
 H  | 
|  
 牛床横臥  | 
 
 52.0  | 
 
 62.8  | 
 
 58.3  | 
 
 45.9  | 
 
 55.6  | 
 
 52.1  | 
 
 42.1  | 
 
 44.8  | 
 
 36.7  | 
 
 44.1  | 
|  
 牛床佇立  | 
 
 18.4  | 
 
 9.0  | 
 
 8.0  | 
 
 13.6  | 
 
 14.5  | 
 
 9.1  | 
 
 26.0  | 
 
 15.2  | 
 
 28.7  | 
 
 21.0  | 
|  
 牛床側通路佇立  | 
 
 1.3  | 
 
 2.3  | 
 
 7.9  | 
 
 7.6  | 
 
 2.4  | 
 
 6.2  | 
 
 3.1  | 
 
 4.7  | 
 
 4.7  | 
 
 -  | 
|  
 飼槽側通路佇立  | 
 
 6.9  | 
 
 4.1  | 
 
 7.3  | 
 
 7.1  | 
 
 5.6  | 
 
 8.1  | 
 
 7.4  | 
 
 8.4  | 
 
 10.7  | 
 
 20.3  | 
|  
 採 食  | 
 
 21.4  | 
 
 21.8  | 
 
 18.5  | 
 
 25.8  | 
 
 21.9  | 
 
 24.5  | 
 
 21.4  | 
 
 26.9  | 
 
 19.2  | 
 
 14.6  | 
| 農家区分* |  
 I  | 
 
 J  | 
 
 K-1  | 
 
 K-2  | 
 
 L  | 
 
 平均  | 
 
 偏差  | 
|  
 牛床横臥  | 
 
 55.2  | 
 
 56.3  | 
 
 63.4  | 
 
 66.9  | 
 
 53.8  | 
 
 52.7  | 
 
 8.6  | 
|  
 牛床佇立  | 
 
 18.4  | 
 
 13.5  | 
 
 10.6  | 
 
 7.0  | 
 
 12.9  | 
 
 15.0  | 
 
 6.4  | 
|  
 牛床側通路佇立  | 
 
 1.5  | 
 
 1.2  | 
 
 1.7  | 
 
 1.2  | 
 
 1.8  | 
 
 3.2  | 
 
 2.4  | 
|  
 飼槽側通路佇立  | 
 
 4.7  | 
 
 4.7  | 
 
 4.2  | 
 
 4.9  | 
 
 6.4  | 
 
 7.4  | 
 
 4.0  | 
|  
 採 食  | 
 
 20.2  | 
 
 24.3  | 
 
 20.1  | 
 
 20.0  | 
 
 25.1  | 
 
 21.7  | 
 
 3.2  | 
注:農家区分(-1):経産牛、(-2):初産牛、下線は平均±σの範囲を超えているもの。
表2 24時間乳牛行動調査による平均横臥率、平均牛床利用率(初産牛群単独除く、%)
| 農家区分* |  
 C0  | 
 
 F0  | 
 
 H  | 
 
 F2  | 
 
 F1  | 
 
 G0  | 
 
 E1  | 
 
 A0  | 
 
 I0  | 
 
 D0  | 
|  
 横臥率  | 
 
 87.9  | 
 
 62.0  | 
 
 66.3  | 
 
 67.4  | 
 
 68.4  | 
 
 68.9  | 
 
 72.1  | 
 
 74.4  | 
 
 74.5  | 
 
 77.3  | 
|  
 牛床利用率  | 
 
 66.3  | 
 
 70.3  | 
 
 63.9  | 
 
 70.2  | 
 
 65.2  | 
 
 70.6  | 
 
 72.0  | 
 
 70.1  | 
 
 78.6  | 
 
 62.9  | 
| 農家区分* |  
 K1  | 
 
 E0  | 
 
 J0  | 
 
 L0  | 
 
 K0  | 
 
 B0  | 
 
 平均*  | 
 
 偏差*  | 
|  
 横臥率  | 
 
 78.6  | 
 
 78.8  | 
 
 80.0  | 
 
 81.0  | 
 
 85.7  | 
 
 87.4  | 
 
 74.9  | 
 
 7.4  | 
|  
 牛床利用率  | 
 
 65.6  | 
 
 74.2  | 
 
 77.7  | 
 
 66.1  | 
 
 77.2  | 
 
 68.0  | 
 
 70.2  | 
 
 5.0  | 
注:農家区分の後の数字は、0は1997年、1~2は1998年の反復調査回数である。平均・偏差は乳牛収容密度が1.3(頭数/牛床数)と高いC0農家を除く。
