建築研究本部

道総研まちづくり塾2025 開催報告

道総研では建築研究本部の主催により2017年から「道総研まちづくり塾」を開催しています。例年3日間の合宿形式で講義とワークを行っていたところですが、2025年度はより多くの方に知っていただこうとの主旨でいったん開催方法を見直し、半日のセミナー形式で実施しました。

  • 開催日 2026年2月17日(火) 13:00~17:00
  • 場所 北海道立総合研究機構 建築研究本部及びオンライン
  • 主催 地方独立行政法人 北海道立総合研究機構 建築研究本部
  • 後援 北海道、公益財団法人 北海道市町村振興協会
  • 参加者 現地11名、オンライン72名 計83名
    (内訳 市町村参加者24市町村50名(地域運営組織構成員なども含む)、その他33名(関係団体、コンサルタント、大学、道など)
  • 全体テーマ:地域を支える主体の新たな展開
    人口減少下でも地域の暮らしや産業を維持していくため、地域住民を中心とした取り組みに対する行政や企業、研究機関等の関わり方について考える。

道総研まちづくり塾2025開催案内

 

特別講義1 地域運営組織の必要性と組織づくりのポイント~生き残る地域の地域づくり~

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講師:若菜 千穂

【講師紹介】NPO法人 いわて地域づくり支援センター常務理事。岩手県花巻市在住。専門は農村計画、交通計画、地域づくり。総務省地域運営組織の形成及び持続的な運営に関する研究会構成員、総務省地域力創造アドバイザー、東北及び北信越運輸局のアドバイザーなどを務める。
主に農山村地域の住民主体による地域づくり支援を行う。地域運営組織について、東北内外においてワークショップ等による住民自治活動の棚卸し評価や計画策定支援、行政との協働の枠組み作りを含め立ち上げや最適化等の伴走支援を行っている。

 NPOとして地域に寄り添いながら中間支援・伴走支援を行ってきた立場から、地域運営組織(RMO)の意義や役割、さらに立ち上げに向けた具体的なプロセスについて、各地の事例を交えながら話題提供をいただきました。

 特に行政に対しては、従来の行政サービスを維持していく観点でどのようなRMOが必要か検討することが重要であり、また、RMOを立ち上げて継続的に運営していくためには、行政が一プレイヤーとして地域とともに取り組む姿勢が不可欠であるとの指摘がありました。具体的には、市町村行政が事務局人材を確保することや、担い手探しが課題となる場面では行政が一方的に主導するのではなく、対話の場を設け、必要に応じて中間支援組織へつなぐ役割を果たすことへの期待が語られました。

〇質疑応答

――使い勝手のよい地域交通システムを作っていきたいと考えています。行政に頼れる範囲には限界があり、人材と運転資金を確保していくためにアドバイスいただけますか。

移動に関しては、実名でだれがどの場面で困っているかを聞き出すことが重要です。本当に困っている人たちは既にその地域に住んでいないということもあります。送迎する側としては、「やる側ファースト」で仕事をしながらどこまでできるかを一度やってみること。関わる人たちに本気になってもらうためには、そういうことを見せていくことが大事だと思います。

――地域運営のリーダーを見つけるにはどうすればよいでしょうか。

そもそも、そう立派な人はいないので、リーダーがいなくてもできる地域づくりをサポートしているつもりです。RMOでは総意はなくても動けるので、強すぎるリーダーよりも、課題に対してやりたいと思っている人を巻き込むことが重要だと考えます。

 

特別講義2 ソーシャル・インパクト・ボンドを活用した公民連携の展開

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講師:久保 匠

【講師紹介】株式会社すくらむ代表取締役。札幌市在住。2022年1月より独立し、北海道に住みながら、全国のソーシャルビジネス、NPO等、民間公益活動や社会課題解決に取り組む法人を対象とした事業づくり・資金調達についてのコンサルティング、地域の資金循環デザイン、インパクト投資ファンドの運営を行っている。
SIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)、PFS(成果連動型民間委託契約方式)を活用した官民共創型事業にも取り組む。

 社会課題解決を図ろうとしたときに課題となる資金調達について、基本的な知識や考え方を、事例紹介を交えてお話をいただきました。

 社会課題解決型事業は資金調達が難しいというイメージがある一方、資金調達手法の解像度を上げていくと活用可能な多様な財源が存在しており、それらを活用した事業の成功実績を積み重ねることが重要であるとの指摘がありました。そのためには、事業の社会的インパクトを明確に定義し、評価可能な成果目標を関係者で共有することが重要であると述べられました。

 また、行政と民間が成果目標を共有しながら社会課題解決に取り組む仕組みとして、「ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)」が紹介され、(株)すくらむが取り組んだ事例では、資金提供と中間支援機能を一体化することで間接コストを圧縮し、事業成功に導いたことが特徴として挙げられました。

〇質疑応答

――アウトカムの設定は毎年チェックして改善していくべきものですか。

そのとおりで、毎年評価して次のプログラム再設計するというプロセスが必要です。関係者が成果を調査することに意味があると合意できる指標にしぼるなど、できるところから取り組むのがよいと思います。

――SIBの資金提供者はどの程度事業に介入するものですか。

ケースバイケースですが、紹介した事例では資金提供者が中間支援機能を兼ねたので、かなり介入しました。

――役場はどのような予算、契約でしたか。  

成果が出た場合は払う、出なかった場合は払わないという注記をつけた成果連動型の業務委託契約になります。成果が出た場合の財源には、近年SIBを推進するための交付金なども活用しやすくなっています。

――目標設定や資金運用等において高度な取り組みをしていると感じましたが、そのための人材育成には何が重要でしょうか。

組織外を含めて考えれば、地域で事業を推進していくなかで機能を分担できる協力体制をつくっていくことは可能です。ただ、組織内で様々柔軟に対応できる人材を育成することは、答えがなく、悩みながらやっているところです。

――地域運営組織の運営にSIBなど民間資金を活用できる可能性はありますか。

RMOの機能とアウトカムを明確にすると、会費、助成金、寄付など、さまざまな資金のあり方が考えられると思います。

 

総合討論「地域を支える主体の新たな展開へ向け、何ができるか」 

〇話題提供「北海道内の地域運営組織にかかる現状~道総研の地域運営にかかる中間支援の取り組み~」

道総研建築研究本部北方建築総合研究所 地域研究部 石井旭

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進行 道総研建築研究本部
地域研究部主査 石井 旭

全国的にみると北海道は地域運営組織(RMO)の形成事例が少ない状況です。その背景には北海道特有の農村集落形成の経緯や、行政による働きかけが道外と比べると少なかったことがあると言われています。

北海道においても、RMOの必要性は高いと考えており、「これからの地域運営実践ガイド」というウェブサイトや冊子を作って、きっかけ作りに取り組んでいます。市町村にも必要だと考える行政職員はいますが、全庁的な取り組みにはなっていません。北海道全体で先行事例をお互いに教え合う場や、一緒に走る体制が必要ではないかと、昨年(2025年)6月から毎月一回定期ミーティングを開催しています。

そういった中での議論も踏まえて、総合討論では「地域を支える主体の新たな展開へ向け行政、企業、中間支援者に何ができるか」というテーマを設定しました。最終的には住んでる人たちが主体となりますが、行政の関わりの必要性について共通理解を促す方法や、民間企業の巻き込み方、地域住民の主体的な活動を促す方法をどう考えていくべきか、掘り下げていきたいと思います。それと、中間支援者が「活動の立ち上げ期」「活動の継続期」のそれぞれにおいて、どう関わるべきかといったことも勉強していきたいと思います。

〇討論

――(石井)市町村の職員が地域運営のプレイヤーになる場合、庁内での意識の共有はどういうふうに進めるべきでしょうか。

(若菜氏)中間支援の立場から言うと、行政の中の意識共有はあればよいですが、なければないなりにやります。行政の誰とつながるかは、プロジェクトごとに、やはり属人的に考えることになります。また、行政の担当者の異動によってうまくいかなくなることもあれば、その逆もあるので、柔軟な対応が必要です。行政内部の担当者間のつながりは難しいもので、そこをつなぐのも中間支援の役割の一つだと思っています。

――(石井)行政の方々に、官民連携の価値や意味を伝え、うまく取り組んでもらうためにはどのように考えればよいでしょうか。

(久保氏)行政にしかできないこと、具体的には「役場内で決裁を通してもらう」「議会で説明してもらう」など、そこをきちんとやってもらうことが大切です。行政がそこを地道にやっていると民間もわかってくれると思います。

――(石井)地方に行くほど、民間の方との出会いの機会が少ないと思うが、どう考えたらよいでしょうか。

(久保氏)民間側が地域課題にアプローチする方法や技術はかなり進んでおり、黙っていても提案が来ると思います。行政側から無理に迎えに行かなくても、話が来たときに、話をしっかり聞くことのできる窓口を用意しておくことが大事だと考えます。また、自治体としての課題を明確にしてオープンにするだけでも、民間は燃えると思います。仕様書まで作らなくても、いろいろな提案をしてくれるぐらい民間はいま発達しています。

――(石井)行政がいま行っている地域運営に関わる仕事に、民間が関わることでサービスもよくなり、儲けられ、業績にもなるという関わりしろはあるのでしょうか。

(久保氏)そんなにたくさんあるとは思いませんが、行政が事業計画やビジネスモデルを作るというより、行政だからこそわかっている課題を明確にしてくれることのほうが大事です。

――(会場より)合併前の村に置かれた支所で地域の様々な課題に取り組んでいます。行政内部での情報共有、特に60km離れた市役所との意識共有が難しいと感じています。

(若菜氏)やはり見ないとわからないので、地域住民との活動の場を、録画を取るとかオンラインでつなぐとか、ITを活用できるといいと思います。

(久保氏)そこから生み出された事業を推進していくために、この課と組まなければできないというように、課題に対する解像度を上げ切ることが大切だと思います。

――(会場より)行政主導で300人の地区でRMOを立ち上げました。行政主導だったこともありRMOに求められるものが行政的であり、資料作成、経理など事務的な部分で専属スタッフが苦労しています。

(若菜氏)300人だとどうやっても人もお金も足りないし、サービスを受ける人も少ない状況になります。ぜひ、北海道版のRMOを作ってほしいと思います。RMOは人口5,000人の町に一つぐらいの規模で、「ボランティアでできる」「ある程度の有償ボランティアでできる」「ビジネスとしてやらなきゃいけないもの」を整理をした上で、活動内容を階層にしてイメージする必要があります。そのなかで、自分のいる具体の集落を意識することが大事ですが、全体のマネジメントにはある程度役場が関わる必要もあります。

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