
第30話 生産性がパワーアップ「北海地鶏Ⅲ」のお話
2011(平成23)年度に連載が始まった「食ものがたり」の第3話では、畜産試験場が開発した地鶏「北海地鶏Ⅱ」をご紹介しました【第3話 おいしい地鶏を北海道から~「北海地鶏Ⅱ」のお話】。今回は、2019(令和元)年にリニューアルした「北海地鶏Ⅲ」をご紹介します。
畜産試験場では、1992(平成4)年に開発した「北海地鶏」を、2006(平成18)年に発育がよく飼育期間が短い「北海地鶏Ⅱ」へ改良しました。北海地鶏Ⅱの肉は、程よい歯ごたえと脂がのっており、その品質は実需者から高く評価されてきました。十勝管内新得町では、2009(平成21)年から北海地鶏Ⅱを使って “新得地鶏”の名称で生産販売しています。2012(平成24)年には、生産者組合が種鶏場(地鶏の父鶏と母鶏を交配して地鶏のヒナを生産する拠点)を立ち上げ、これをきっかけに生産効率の向上を狙ってさらに改良したのが北海地鶏Ⅲです(写真)。なお、「Ⅱ」や「Ⅲ」は交配様式(地鶏生産に必要な鶏種と、それを交配する順番)を識別するためのバージョン情報です。
図1の交配様式が示すように、北海地鶏ⅢはⅡと同様に在来種由来の血液百分率が100%の地鶏です。図中に登場する大型シャモは、名古屋種とロードアイランドレッドよりも発育は良好ですが飼料摂取量が多く産卵性は低い鶏種です。このため、北海地鶏Ⅱでは地鶏の母である交雑鶏の産卵性が低い、つまり地鶏のヒナの生産効率が悪いという悩みがありました。北海地鶏Ⅲでは、大型シャモの雄と名古屋種の雄の交配順を入れ替えたことで、交雑鶏(地鶏の母)の産卵率が約3割向上し(図2)、北海地鶏Ⅲの発育が向上して飼育期間が約10日短縮しました(図3)。
一方で、従来評価されてきた食味は維持されていることが官能評価と肉質分析により確認できました。また、食味以外の特長として、むね肉は※イミダゾールジペプチド、もも肉は※タウリンが、ブロイラー(肉用若鶏の総称)よりも多く含まれており、北海地鶏Ⅲの肉は健康維持に役立つ機能性成分が豊富な食材であることがわかりました(図4)。
2019(令和元)年より、生産者へ供給する種鶏種卵と地鶏のヒナは北海地鶏ⅡからⅢへと切り替わりました。新得地鶏を始め北海地鶏Ⅱの時代から継続利用いただいている生産者に加え、2022(令和4)年には種鶏場を新規開設して “赤平火をどり”の名称で地鶏肉を生産開始する事業者が参入するなど、今では年間合計3万羽以上が道内で生産されています。新得町や帯広市、札幌市を中心として地鶏肉メニューを提供する飲食店等がありますので、食べて応援していただけると幸いです。
最後に、畜産試験場では、北海地鶏Ⅲの安定生産のため、交雑鶏用種卵と地鶏のヒナの供給、地鶏生産の基盤である畜試固有在来種2系統(名古屋種とロードアイランドレッド)の維持改良と凍結保存技術の開発、教育機関と連携した隔離飼育、技術相談に取り組んでいます。北海地鶏Ⅲの飼育に興味のある方はお気軽にご相談ください。
※機能性成分について
継続的に摂取することで、イミダゾールジペプチド(アンセリン、カルノシン)は筋肉疲労の緩和や学習機能の改善、タウリンは疲労回復に寄与すると言われています。食事量の少ない高齢者や子供でも、少量の地鶏肉(ブロイラーの半分程度)で効率よく成分摂取できると考えられます。
【補足】
●地鶏肉とは?
日本農林規格における地鶏肉の生産方法の基準は、①在来種(指定38品種)の血液百分率が50%以上で、出生の証明ができる素びなを使うこと、②ふ化から75日以上飼育すること、③28日齢以降平飼い(鶏が自由に運動できる環境)すること、④28日齢以降1m2あたり10羽以下で飼育することとされており、ブロイラー(肉用若鶏の総称)や銘柄鶏とは明確に区別されます。全国的に知られる名古屋コーチンや比内地鶏をはじめ、国内には40以上の肉用地鶏があると言われています。
●北海地鶏Ⅲの販売名称が複数あるのはなぜ?
畜産試験場では、地鶏肉の規格を満たした北海地鶏Ⅲの肉を販売する際、バージョン情報を省略した「北海地鶏」を明示するか、生産者が考えた名称を使う場合には「北海地鶏」を併記するようお願いしており、地域や生産者の想いが詰まった名称(本文中の事例では新得地鶏、赤平火をどり)の利用を制限していないからです。
「北海地鶏」として販売しない場合でも、「北海地鶏」またはその交配様式「大型シャモ×母鶏(名古屋種×ロードアイランドレッド)」は地鶏肉の品質表示欄に明示されています。
[2026年2月24日 公開]
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