
第31話 栽培漁業のトップランナー「ホタテガイ」

ホタテガイは寒冷な海に棲む大型の二枚貝です。和洋中華全ての料理で主役となる高級食材として、活貝のほか、生鮮貝柱、冷凍貝柱、ボイルむき身、干し貝柱、燻油漬けなど様々な商品が流通しています。また、ベビーホタテや貝ヒモの干物などは安価で気軽に楽しむことができます。
北海道はホタテガイの水揚げ量日本一で、近年は年間40万トン前後を生産しています。北海道の全漁業生産(2024年:約105万トン、2,800億円)のうち数量、金額ともにホタテガイは3~4割を占め、主力魚種のひとつと位置づけられます。また、海外への輸出品目としても高い評価を得ています。

北海道では1940年代まで天然のホタテガイを漁獲していましたが、変動の激しい天然資源の利用は難しく、枯渇の危機に陥りました。そこで1950年代から各地で増養殖の取り組みが行われ、海域で稚貝(ちがい)を採取する「採苗」(さいびょう:写真1)をはじめとする様々な技術が開発されました。さらに、水揚げしたホタテガイを製品にする加工技術の開発や漁業協同組合の自営加工場の整備などにより、1970年代以降生産量は大幅に増加、収益性も安定し、「獲る漁業」から「つくり育てる漁業」(栽培漁業)へ転換を果たすことができました。現在までに何度か大量死や採苗の不振などの問題を経験したものの、他の漁業に比べてホタテガイの安定感は際立っており、栽培漁業の「トップランナー」と呼ぶべき地位を占めています。

北海道のホタテガイ栽培漁業は「地まき(じまき)漁業」と「垂下(すいか)養殖」の2種類があります。地まき漁業はオホーツク海沿岸や根室海峡沿岸で行われ、稚貝を海に放流し2~4年間、海底で成長させる方法です。毎年異なる区画に放流し、大きく育った区画から順次収穫する輪採(りんさい)という方法がとられます(写真2)。
噴火湾と日本海沿岸では「垂下養殖」が行われます。稚貝の「耳」(殻頂の張出し部分)に穴を開けてピンを通し、1本のロープに100個以上ぶら下げて付けて垂下する「耳吊り」(写真3)のほかに、稚貝をかごに入れて垂下し育てる方法もあります。噴火湾では耳吊り、日本海ではかご養殖が主に行われています。また、日本海では稚貝の生産を専門的に行い、放流・養殖用種苗として販売する生産者が多いです。
ホタテガイと同じ二枚貝であるカキ(牡蠣)の養殖漁業は非常に古くから行われ、日本だけでも400年以上、世界まで拡げると2,000年もの歴史があります。これに比べるとホタテガイの栽培漁業は始まって100年にも満たず、基本的な生物学や増養殖技術においてさえ、解明、開発すべき余地が多く残されているといえます。さらに、近年の顕著な高水温化をはじめとする環境変動は、ホタテガイに対してもこれまで経験したことのないような影響を及ぼしつつあります。ホタテガイ栽培漁業の持続、発展のために、我々道総研が果たすべき役割はますます大きくなっており、今後も調査研究や技術開発を通してしっかり貢献していきたいと考えています。
[2026年3月24日 公開]
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