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第32話 北海道生まれのおいしいいちごたち

花・野菜技術センター 花き野菜グループ 髙濱雅幹

 4月になり雪もすっかり解けてしまい、皆さんも春の訪れを実感されていると思います。そんな春を代表する果物といえば「いちご」を挙げる方も多いのではないでしょうか?最近は年末から出荷されるようになり、冬の果物と思っている方もいると思いますが、そのようないちごのほとんどは道外の暖房の効いた温室で育てられているものです。本来は本州でも春から収穫が始まり、北海道のような春が遅い地域では初夏まで収穫できます。

 ところで皆さんはいちごの品種がどのくらいあるかご存じですか?現在でも国内で100以上の品種が栽培されており、世界で最も多くの品種を持つ国といわれています。そのなかでも「とちおとめ」「あまおう」「紅ほっぺ」などの品種は皆さんも一度はスーパーマーケットで見たことがあるでしょう。ですが、これらの品種は道外で生まれた品種。もちろん北海道で生まれた品種も販売されています。今回のトピックでは、北海道で生まれたいちご品種についていくつかご紹介します。

1.北海道いちごの原点「きたえくぼ」

北海道でのいちご栽培は100年以上前から行われてきましたが、1960年に兵庫県で「宝交早生」(ほうこうわせ)が育成されると、北海道でも長らくこの品種が栽培されていました。「宝交早生」はたくさん採れておいしかったのですが、果実が柔らかいため日持ちがあまりよくありませんでした。このため1980年頃から北海道の気象に適したいちごの品種開発が始まりました。そして1993年に北海道立(現:北海道立総合研究機構)道南農業試験場から北海道初のいちご品種「道南8号」が誕生し、後日「きたえくぼ」と命名されました(写真1)

写真1 北海道初の育成品種「きたえくぼ」(矢印が先白症状、写真提供:川岸康司)
写真1 北海道初の育成品種「きたえくぼ」(矢印が先白症状、写真提供:川岸康司)

「きたえくぼ」の最大の特徴は、「宝交早生」並みの食味を持ちつつも、弱点である果実の柔らかさが改善されたことで日持ちが改善されたことです。また、いちごの重要病害である萎黄病(いおうびょう)、萎凋病(いちょうびょう)、うどんこ病にも強く、栽培しやすいという特徴もありました。このため、市場からの評価も高く、1990年後半には北海道で年間20haほど栽培されました。しかし、果実の先端部分が着色しない障害(先白症状)の発生が問題となり、徐々に作付面積が減少していきました。

2.不動のエース「けんたろう」

 先にお話ししたとおり、「きたえくぼ」は先白症状が発生しやすいほか、「宝交早生」より収穫時期が遅い点も問題でした。こうした弱点を解消するため、さらに品種開発が進められました。そして2004年に再び道南農業試験場で「道南26号」が育成されました。

 「道南26号」の母親は「きたえくぼ」です。このため 「道南26号」は「きたえくぼ」の特徴である果実の硬さや日持ち性を引き継ぎつつも、収穫時期は「宝交早生」並に早くなりました。また、甘みと酸味のバランスが絶妙で、「きたえくぼ」や「宝交早生」よりおいしいです。さらに「きたえくぼ」最大の問題であった先白症状も発生しません。果実の色付きもよく、病気に対する強さも「きたえくぼ」から改善され、その健康的なイメージから、 「道南26号」は「けんたろう」と命名されました(写真2)

写真2 病気に強くおいしい品種「けんたろう」(写真提供:川岸康司)
写真2 病気に強くおいしい品種「けんたろう」(写真提供:川岸康司)

いちごの品種は女性的な名前が多いなか、男性的な「けんたろう」という名前は、当時珍しいものでした。しかしこの品種名と優れた品種特性が高く評価され、「けんたろう」は北海道で広く普及しました。「けんたろう」は品種化して20年以上経ちますが、いまだに北海道でもっとも栽培されている「不動のエース」です。

3.大きな果実で作業もラクラク「ゆきララ」

 いちごは生のまま食べるほか、ジャム加工やケーキのトッピングなど、幅広く利用されていますが、残念ながら生産量は減少傾向にあります。その理由の一つは農家の減少と高齢化です。いちごは果実が赤くなったら次々と収穫しなくてはならず、非常に作業が大変な作物です。そこで近年では単においしいだけではなく、農家の作業負担を軽減できる品種開発が進められています。

 2016年に北海道立総合研究機構花・野菜技術センターから「空知35号」が品種化され、「ゆきララ」と命名されました(写真3)

写真3 果実が大きな「ゆきララ」
写真3 果実が大きな「ゆきララ」

 この品種は「けんたろう」と「福岡S6号」を交配して作られました。「福岡S6号」は「あまおう」という商標名で販売されており、大きな果実が特徴です。「ゆきララ」はこの特徴を強く引き継いでおり、これまでの北海道のいちご品種と比べても果実が大きくインパクトがあり、かつ「けんたろう」より多収です。一方で果実数は少なく、収穫作業時間が少なくて済みます。食味は「けんたろう」と同等で、病害にも強く日持ちも優れています。栽培面積はまだ「けんたろう」に及びませんが、農家不足を背景に今後徐々に増えると期待されています。

 北海道産いちごは5月中旬から本格的に出荷されます。今シーズンは品種に込められた思いも一緒に、いちごを味わってみてはいかがでしょうか?

[2026年4月1日 公開]

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