【普及奨励事項】
摘録
1.空育114号の特性概要
| 系 統 名 | 空育114号 | 組 合 せ | (北海230号×巴まさり)×空育99号 | ||
| 特 性 | 長所 1.良質、良食味 2.障害型耐冷性が強い  | 
      短所 1.耐倒伏性が劣る 2.登熟性がやや劣る  | 
    |||
| 採用県および 普及見込面積  | 
      北 海 道 15,000ha | ||||
|      品種名 形質  | 
      空育114号 | 対   象 ともゆたか  | 
      対   象 キタヒカリ  | 
      比   較 イシカリ  | 
      比   較 みちこがね  | 
    
| 早 晩 生 | 中の早 | 中の早 | 中の中 | 中の早 | 中の中 | 
| 草 型 | 偏穂数型 | 穂数型 | 偏穂数型 | 偏穂数型 | 偏穂数型 | 
| 出 穂 期 | 8月14日 | 8月13日 | 8月17日 | 8月14日 | 8月17日 | 
| 成 熟 期 | 10月5日 | 10月4日 | 10月5日 | 10月5日 | 10月7日 | 
| 登熟日数 | 55日 | 56日 | 53日 | 55日 | 54日 | 
| 稈 長 | 68cm | 65cm | 67cm | 67cm | 67cm | 
| 穂 長 | 19.3cm | 18.4cm | 16.9cm | 18.8cm | 17.0cm | 
| 穂 数 | 22.1本 | 24.2本 | 22.0本 | 20.1本 | 20.5本 | 
| 芒 性 | 中短 | 稀短 | 無 | 無 | 無 | 
| ふ 先 色 | 黄白 | 黄白 | 黄白 | 黄白 | 黄白 | 
| 脱 粒 性 | 難 | 難 | 難 | 難 | 難 | 
| 耐倒伏性 | 中 | や強 | や強 | 強 | 強 | 
| 耐冷性(障害) | 強 | や強 | 中〜や強 | や強 | や強〜強 | 
| 葉いもち耐病性 | 中 | 中 | や弱 | や強 | 中 | 
| 穂いもち耐病性 | 中 | 中〜や強 | や弱 | や強 | 中 | 
| 玄米重(a当) | 49.3kg | 47.8kg | 42.8kg | 47.1kg | 44.1kg | 
| 玄米千粒重 | 21.3 | 22.9 | 21.8 | 22.7 | 21.5 | 
| 玄米品質 | 上中下 | 上下上 | 上中下 | 上下上 | 上中下 | 
| 玄米等級 | 2中 | 3中 | 2下 | 3中 | 2中 | 
| 食 味 | 上中 | 中上 | 上下 | 中上 | 上下 | 
| 食味特性(1) | 98 | 104 | 100 | 104 | 99 | 
| 食味特性(2) | 427B.U. | 356B.U. | 392B.U. | 323B.U. | 369B.U. | 
| 調 査 地 | 北海道立中央農業試験場稲作部(岩見沢市) | ||||
| 調査年次 | 1981〜1983年の3か年(中苗、標肥) | ||||
| 品種候補名 | |||||
| 注、1)食味特性(1):アミロース含量比(キタヒカリ対比)、(2)アミログラムの最高粘度、 いずれも1981〜1983年の平均値。 2)成熟期、登熟日数は1981〜1982年の平均値。  | 
    |||||
2.空育114号の特記すべき特徴
  中生、良質、良食味である。すなわち、出穂期はrキタヒカリ」より2〜3日早く、玄米品質は、これと同じであるが、食味は「キタヒカリ」を上回り、障害型耐冷性は、中生種ではもっとも強く「みちこがね」を上回る。しかし、耐倒伏性が劣り、登熟性がやや劣ることも大きな特徴点である。
3.本系統を奨励品種として採用する理由
 現在、道央地帯における水稲の基幹品種は、「キタヒカリ」、「ともゆたか」、「イシカリ」並びに「みちこがね」で、これら4品種で道央地帯の粳作付面積の約90%を占める。
 それぞれ、「キタヒカリ」横這い、「ともゆたか」漸減、「イシカリ」急減、「みちこがね」は増加の傾向にある。このうち、「キタヒカリ」は1等米の出荷率が高く、かつ、良食味であるが収量性がやや劣り、いもち病耐病性も不十分であるため、過大な作付はでき難い。一方、「ともゆたか」は、栽培特性に優れ多収性ではあるが、玄米等級並びに品質・食味が時代の要求にあわない。
 「空育114号」は、出穂期が「キタヒカリ」より早く、「ともゆたか」とほぼ同じであり、玄米品質は「キタヒカリ」並で、食味はこれを上回り、耐冷性は中生種のいずれの品種よりも強く、収量性は「ともゆたか」よりやや劣るが、「キタヒカリ」を上回る。従って、「空育114号」を道央地帯において、「ともゆたか」「キタヒカリ」の一部に替えて栽培し、本道稲作の耐冷性向上と、本道産米の向上に資する。しかし、「空育114号」は、「ともゆたか」、「キタヒカリ」に比べて耐倒伏性が劣るため、「北海道施肥標準」を厳守することが肝要である。
 なお、「みちこがね」は、「空育114号」に比べ成熟期が晩く、「イシカリ」は、「ともひかり」及び「キタアケ」がこれに替る予定なので、対象品種にはならない。
1)栽培適地、空知、石狩、後志、日高、
 胆振、上川・留萌中南部、渡島・桧山北部。
2)これらの地帯には「キタヒカリ」が、
 4.1万ha、「ともゆたか」が33万haある。
