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1.課題の分類: 2.場 所 名:北海道立十勝農業試験場 3.新品種候補系統名:菜豆「十育B-50号」  | 
4.来   歴:
 菜豆「十育B-50号」は,昭和48年(1973年)に北海道立十勝農業試験場において,矮性早生,大粒良質,多収の金時類品種の育成を目標に「十育B-30号」を母とし,「大正金時(多節)」を父として人工交配を行い,以降選抜固定を図ってきたものである。
 昭和54年には「十系B-72号」の系統番号で生産力検定予備試験,昭和55〜60年には「十育B-50号」の系統名を付し,生産力検定試験を行うと共に,特性検定試験,地域適応性検定試験並びに現地試験に供試して,各種の栽培環境に対する反応や適応性について検討して来た。なお,昭和60年度における世代はF13である。
5.特   性:
 形態的特性:胚軸の色は淡赤紫,花色は淡赤紫。若莢の地色は緑で「大正金時」にみられる赤紫色の斑紋はない。熟莢色は黄白色である。草型は,主茎節数が6節の矮性で,草丈は「大正金時」よりやや高いが,「北海金時」に比べやや低い。粒形は「大正金時」の楕円体に対し,「北海金時」と同じ長楕円体である。粒色は「大正金時」に比べやや濃く,「北海金時」並,粒大は「大正金時」の“中の大”に対し「北海金時」と同じ“大”である。
 生態的特性:開花期は「大正金時」,「北海金時」並である。成熟期は「大正金時」よりも1日程度遅いが同じ“早”に属し,「北海金時」の“早の晩”に比べては2〜7日早い。
  耐倒伏性は「大正金時」,「北海金時」並である。子実収量は「大正金時」よりやや優り,「北海金時」より少ない。インゲン炭そ病に対しては抵抗性を持つ。低温抵抗性は「大正金時」並と評価される。
加工特性:煮豆製品の色は「大正金時」に比べてやや赤味を呈し、舌ざわり、および原料豆のアミログラム特性は粉質性の強い傾向がある。
 煮豆、甘納豆製品の収量性、食・風味の総合評価は「大正金時」「北海金時」並である。
6.試験成績:
 1)育成地における試験成績(標準栽培)
| 系統名 または 品種名  | 
      開花 期 (月日)  | 
      成熟 期 (月日)  | 
      倒 伏 程 度  | 
      草 丈 (cm)  | 
      主茎 節数  | 
      分枝数 (本/株)  | 
      莢数 (個/株)  | 
      一莢内 粒数  | 
      総重 (kg/10a)  | 
      子実重 (kg/10a)  | 
      標準 対比 (%)  | 
      百粒 重 (g)  | 
      屑粒 率 (%)  | 
      品種 | 
| 十育B-50号 | 7.16 | 9.7 | 少 | 45 | 5.8 | 4.0 | 13.4 | 2.72 | 413 | 221 | 107 | 84.0 | 6.0 | 2下 | 
| 大正金時 (標準)  | 
      7.16 | 9.6 | 少 | 43 | 5.7 | 4.2 | 14.6 | 2.73 | 406 | 207 | 100 | 70.5 | 5.7 | 3中 | 
| 北海金時 | 7.16 | 9.9 | 少 | 45 | 5.9 | 4.4 | 13.7 | 2.82 | 431 | 238 | 115 | 80.1 | 7.3 | 3上 | 
 2)地域適応性検定試験成績
| 試験 場所  | 
      系統名 または 品種名  | 
      成熟期 (月日)  | 
      子実重 (kg/10a)  | 
      標準 対比 (%)  | 
      百粒重 (g)  | 
      品質 | 
| 北 見 農 試  | 
      十育B-50号 | 9.9 | 235 | 108 | 74.8 | 2下 | 
| 大正金時 (標準)  | 
      9.7 | 218 | 100 | 63.4 | 3上 | |
| 北海金時 | 9.16 | 264 | 121 | 77.6 | 3上 | |
| 上 川 農 試  | 
      十育B-50号 | 8.24 | 196 | 113 | 67.9 | 3上 | 
| 大正金時 (標準)  | 
      8.23 | 173 | 100 | 57.6 | 3下 | |
| 北海金時 | 8.29 | 189 | 109 | 70.5 | 3下 | |
| 中央 農試 原々 種農 場  | 
      十育B-50号 | 8.17 | 163 | 87 | 64.0 | 3上 | 
| 大正金時 (標準)  | 
      8.17 | 187 | 100 | 58.1 | 3中 | |
| 北海金時 | 8.19 | 200 | 107 | 65.4 | 3下 | 
 3)現地試験成績
| 地 域 名  | 
      系統名 または 品種名  | 
      成熟期 (月日)  | 
      子実重 (kg/10a)  | 
      標準 対比 (%)  | 
      百粒重 (g)  | 
      品質 | 
| 十 勝  | 
      十育B-50号 | 9.6 | 232 | 105 | 75.4 | 3中 | 
| 大正金時 (標準)  | 
      9.5 | 221 | 100 | 65.1 | 3下 | |
| 北海金時 | 9.10 | 259 | 117 | 75.6 | 3下 | |
| 網 走  | 
      十育B-50号 | 9.5 | 283 | 105 | 76.6 | 2下 | 
| 大正金時 (標準)  | 
      9.4 | 270 | 100 | 64.9 | 3上 | |
| 北海金時 | 9.11 | 298 | 110 | 76.6 | 2下 | |
| 上 川  | 
      十育B-50号 | 8.29 | 271 | 110 | 76.9 | 2下 | 
| 大正金時 (標準)  | 
      8.28 | 246 | 100 | 65.0 | 3中 | |
| 北海金時 | 9.1 | 282 | 115 | 75.4 | 3中 | 
7.配付しうる種子量:原原種100㎏,原種90㎏,その他30kg
8.適地奨励態度および普及見込面積:
 十勝・網走・上川支庁管内で「大正金時」の一部におきかえる。3,500ha
9.栽培上の注意:
 ①秋播き小麦の前作とする場合は気象条件によっては「大正金時」より熟期が数日遅れる場合がある。
 ②インゲンかさ枯病には「大正金時」同様抵抗性が弱であるため、種子更新および初期防除を徹底する。
 ③脱穀時に子実に損傷が出やすいので、脱穀機の回転数を下げるなどの注意をする。
 ④その他は「大正金時」の栽培方法に準ずる。