場長室過去記事:20260319バッタに食べられたことがあります。
「私が」ではなく、実験で育てていた秋まき小麦が、です。
食べられたのは十数年前の夏でした。茎の中に隠れて膨らみつつあった穂の部分だけ選んで、上手に食べられました。柔らかくておいしかったのでしょうか。実験材料を無断で食べられたことはショックでした。

北海道では、バッタは土の中に産み付けられた卵の状態で越冬し、春にふ化します。その後、成虫となって旺盛に活動するのはだいたい7月下旬以降です。一方、秋まき小麦(以下、単に「小麦」と記します)の方は通常、前年9月下旬~10上旬に芽を出し、翌年6月上旬に穂を伸ばし、7月下旬に成熟し刈り取られます。
バッタの成虫が活動する7月下旬には、畑の小麦はすでに茎や穂が固く、また収穫で存在自体が畑から消えていくことになります。
バッタと小麦の季節がずれているので、通常の小麦栽培でバッタの被害が問題になることはまずありません。このあたりはうまくできているものだなと思います。もし小麦が7月下旬以降に出穂する作物だったら、バッタの存在はかなり深刻な害虫として位置づけられていたのではないかと思います。
文頭のバッタに食べられた小麦は、交配実験のため、畑よりもずいぶん遅い時期に栽培していたものです。通常よりもかなり遅い真夏(確か7月下旬~8月上旬)に穂を伸ばそうとしてきたところでした。バッタの成虫が発生する時期と、バッタが好むやわらかいイネ科植物=私の育てていた小麦の生育状態が、バッチリ合ってしまったことに気づきました。
「栽培適期」あるいは「旬」という言葉の意味を考えさせられました。栽培する時期が変わると、病気や害虫の様相がずいぶん変わるものです。
私の失敗から少々強引な結びつけとなってしまいますが、最近の気温上昇で、虫の発生時期が早まったり、種類の変化などが観察されています。北海道病害虫防除所のサイトには、関連する情報(特に注意すべき病害虫、新たに発生した病害虫)が記載されています。生産現場のみなさまには、今後も防除所や普及センターから発出される情報にご留意ください。
先の、バッタに食べられた小麦は、戻し交配を行うためのものでした。一年に2回交配を行うスケジュールで、通常の栽培とは異なる時期に栽培していたものです。一部の穂は食べられましたが、残った穂で無事に交配を行うことができました。このなかには、後の「きたほなみR」(概要書、パンフ)になる交配組合せが含まれていたと記憶しています。

あの日の無残な小麦の姿は、今でもときどき思い出します。
被害株の近くに、犯人とおぼしき緑色のバッタがいました。

このバッタ、虫取り少年だった頃に、よく捕まえた記憶があります。
信心深いタイプではありませんが、このときばかりは因果応報という言葉をかみしめました。
